インド

 □出発に至るまで

「旅が好きであれば訪れるべき場所であり、そこでの体験が自身の人生観を変化させる」という表現をされる国、インド。

4大文明のひとつであるインダス文明が紀元前2600年ごろに発生したのち、宗教が興り、人種、戦い、差別など、容易には語りきれない歴史を持ち、今日の国家と人々がある。そしてそれらが深く混ざり合って訪問者を引きこんでいる。

 

そもそもなぜインドア派ブサメンの僕がインドに行こうと考えたのか、それは友人Mにかけられた「インドにいこうぜ」というかるい一言であった。

大学1年時、夏休みを利用し現地を訪問、活動を行うフィリピンの国際協力系の学生団体に所属し、Mもそのメンバーだった。お互いに海外やバックパッカーに興味を持っていて、旅にかける思考も似通っていた。「死ななきゃいい旅をしよう。どうせなんとかなるから」これが僕たちの考えだ。

 

Mに誘われたときから、もしかするとインドに行く旅は脳内でスタートしていたのかもしれない。バックパックひとつで旅にでるのはわくわくするもので、ただ純粋におもしろそうだった。キャリーケースをもったこれから欧米に旅立つだろうイケイケ大学生たちを成田空港で見かけると、「タージマハルは欧州にないだろ?おれたちはこれから見に行くけど?」と畑違いなドヤ顔をした。いつものことだが、このときもインドに旅立つ自分に酔っていた。

 

安い航空券をかなり早い段階から探し、3週間インド、1週間タイに訪れる計画で、2月から3月にかけてのスケジュール。結果的には移動費・宿泊費・食費・娯楽費諸々込みで15万強におさめることができた。

デリーからインドに入国後、ジョードプル、ジャイプル、ウダイプル、アーメダバード、ムンバイ、飛行機でデリーを経由したのちアグラ、バラナシ、コルカタから出国と、インド国内9都市を移動する行程に定まった。

 

 

□インド入国

出発までに航空券と、インド国内を移動する際の寝台列車のチケットをすべて手配した。

だが、インド入国にあたってひとつだけ関門があった。それは入国ビザが必要なこと。

日本人のインド入国ビザは在日本インドビザセンターがビザの発給業務を行っている。Mはこのビザセンターでインド入国ビザを取得していたが、僕はというと、この旅の直前に別の友人と台湾への弾丸旅行へ繰り出していたために、取得がインド出発に間に合わなかったのだ。そんな人のために、インドの主要4つの空港では「visa on arrival」というその場で入国ビザを取得できるシステムがある。しかし、これがなかなか厄介で、書類に不備や怪しい点があると入国できずに送還されるということがあるらしい。それを事前情報で耳にしていたので不安で不安でしょうがなかったのである。

 

そんなひとの気持ちをよそに、経由地上海・浦東国際空港からデリー・インディラガンディー国際空港行きの飛行機は2時間の遅延が発生し、気持ち的にはいまにも逃げ出したかった。

結論としては、上海出発の7時間後、デリーの入国審査所でアライバルビザを取得した。拍子抜けするくらいあっさり取得でき、我々は目的地デリーに降り立っていた。うれしくて意気揚々と薬局で消毒用アルコールを購入すると、空港内商店のくせにぼったくってきたのは秘密だ。気づかずに購入してしまったのはもっと秘密だ。          

 

 

 □デリー

今回、インド国内9都市を5000km以上の距離を移動した。その中でも、もっとも僕が馴染むことができなかったのがデリーである。道端にはゴミがあふれ、駅には旅行者を自分のリキシャへ誘おうと狙うインド人がたむろしている。正直、汚い街という印象が強い。

近年、インドは国際社会において急速に発言力を増してきている。宇宙開発にも手を伸ばし、経済規模も世界有数のものとなってきた。そのような国の首都がこのような街であることに驚いた。

この街で最も記憶に残っていることは、旅行会社に騙されたことである。(笑)ぼったくられたばかりじゃん!という突っ込みはいらない。インド人は本当に巧みな話術と連携プレーを駆使して旅行者を騙しにかかってくる。僕らもその例外ではなく、まんまと騙しに引っかかった。2人合わせて200ドルを騙し取られたものの、その後旅行会社に違和感を覚え、翌朝一番で取り返しにいった。とにかく強気で当たろう、ケンカになってもやむを得ないだろうと口裏合わせていたが、無事に200ドルちゃんをあっさり回収することができた。長い時間は滞在しなかったが、デリーは観光には向かない街である。

 

 

□ジョードプル

僕が訪れた都市のうち、ぜひともおすすめしたい街をいくつかお伝えしたい。すでに述べたように、デリーはおすすめできない。

 

まずはじめに、デリーの南西方向に600kmほど行ったジョードプルという街だ。

 

「ブルーシティ」と呼ばれるこの街は、住宅の外壁が淡いブルーに塗られ、街のはずれにあるメヘランガル砦からの眺望はブルーシティの名にふさわしい光景を望むことができる。

 

滞在したゲストハウスの主人も良心的な方で、日本人の旅行者の方も目にした。屋上にあるレストランからの眺めは、街のシンボルであるメヘランガル砦が雄大に待ち構えており、昼と夜でまったく異なった表情を望むことができた。

 

街の雰囲気ものんびりしていて、ひとはあたたかく、狭い路地を牛が行き交い、インドに来たと実感を湧かせてくれる穏やかな街であった。

 

 

 

 

□ウダイプル

ジョードプルを後にし、次の目的地ジャイプルに入ったはいいものが、僕もMも原因不明の体調不良でダウン。結果、ジャイプルを素通りすることになってしまったが、次に訪れたウダイプルという街、この街はすばらしくとても大切な時間を過ごすことができた。

 

 

ウダイプルは、インドを旅する日本人の間でも馴染みが薄く、ほとんど日本人を見かける事のない街だ。だが、世界は狭いもので。滞在中に気に入った喫茶店で一度日本人を見かけたことがあった。声をかけると同じ大学、学部学科の一年先輩の方だった。出発以後、M以外の日本人とかかわりを持つことがほとんどなかったので新鮮な気持ちになった。

 

 

また、たまたま買い物に入った家族経営の商店の主人と仲良くなり、チャイをごちそうになったり、ビールを販売してもらったりしたことがあった。街の滞在中に多く利用していたからか、出発前には家に招いてくれたりと、とてもすてきな家族であった。

 

インドを訪れてからというもの、土産物を売りつけようと執拗にまとわりついて来たり、料金を吹っかけてきたりと、そのようなインド人にうんざりしていた僕たちは、ささやかな心遣いがうれしくて、それにはきちんと感謝を示そうと当たり前だが薄れていたことを感じた。

 

 

 

 

□バラナシ

バラナシ訪問は僕らの旅が終盤に差し掛かることを示していた。ウダイプルを発ってから1週間、日本出発から半月ちかくが経過していた。

個人的な事といえば、途中で訪れたインド西部最大の都市ムンバイで食あたりに合い、発熱嘔吐下痢に悩まされたことだ。体調不良を抱えたままなんとか予定通りに旅をつづけ、かの有名なタージ・マハルがあるアグラという街まで歩を進めた。タージ・マハルを今回の旅の最大の楽しみに設定していたにも関わらず、終わりの見えない腹痛の下では、白く光る巨大な霊廟と対面しても、その感動は薄れとても淡白なタージ観光になってしまったのが残念だ。

だが、そのころはタージよりも腹痛といかに友達になるかの方が優先事項であった。服用した抗生物質がようやく効き始め、アグラの次に訪れたバラナシでは快方に向かっていた。

 

この街はガンジス河の河沿いに沐浴場(ガート)が多数存在し、ヒンドゥー教や仏教の重要な場所として知られる。その雰囲気は独特で、いままで訪れてきた他の街のどれとも異なるものを持っていた。

 

日本人のみならず世界中から観光客が集まり、ガンジスがもつ雰囲気をガートに腰掛けながら感じていた。バラナシに訪れる外国人旅行者ひとりひとりの意図はわからないが、それぞれが何かを求め、感じ、ガンジスと向き合い、そしてインドと向き合っていたように思う。

ガンジス河岸のある有名な火葬場マクニカルガートでは、かつてひとであったモノが焼かれ、ガンジスの流れに乗ることで新しい輪廻へ向かっていくのか、などと、無知なりおばかなりに想像しながらこの光景を眺めていた。

できればバラナシの空気感は直接感じてほしい。文章であらわす事はむつかしいね。

 

 

 

 

 □インド訪問を通して

この国では、どの街のどこを歩いていても必ず陽気なインド人に声をかけられる。我々日本人の思いもよらない方法で商売や、生活を営んでいる様子はエネルギーの強さを感じた。ほかのどの国よりもそれは強いと信じている。

 

インドを訪れるにあたって、感想等を訪問歴のある知り合いに聞きながら準備を進めてきた。結果として、それが僕の中でのインドのイメージを勝手に作り上げてしまい、僕が感じた僕なりの考え方をすることができなかった旅とも思えた。それは感受性や、客観的に現実を捉え、判断する能力に富んでいない自身故という要素ももちろんある。しかし、インドを実際に訪れてみて感じることの1から10すべてを、人に遮られることなく味わってほしい。インドは人によって感じ方が大きく異なる。魅力に取りつかれるひともいれば、街が持つ空気に嫌悪感を思えるひともいる。

一度しか、それも3週間の滞在のみでインドについて語るにはあまりにも未熟だが、一度の訪問でここまで様々な味を得られるはインドだけだ。

ぜひとも自分なりの感覚でいろいろなことを感じながら歩いてみて頂きたい。

 


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