今回の世界の衣食住は、ヒマラヤ山脈の東端に位置する国・ブータンについてご紹介します。
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国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)という言葉を聞いたことがありますか?
これは、GDPで測る経済的豊かさではなく、精神的豊かさ・国民の幸福度を重視しようという考え方です。
この考え方を提唱し、世界に影響を与えたのがブータン国王なのです。
今回の世界の衣食住ではそんなブータンの文化をご紹介します。
~衣服~
ブータンでは、国家のアイデンティティ保護の一環として学校や寺院など公の場で伝統衣装を着用することが義務づけられています。
驚くことに、違反した際の罰則規定もあるそうです!こうして伝統文化が守られているのですね…。
ブータンの民族衣装は、男性用が「ゴ」、女性用が「キラ」と呼ばれるものです。
こちらは2011年におこなわれた、現・ブータン国王の結婚式の写真です。
男性の民族衣装「ゴ」は裾が長い衣装を、膝までたくし上げケラと呼ばれるベルトを締めて着ます。
正装の場合は「カムニ」というスカーフをまといます。
このスカーフは国王はサフラン色(黄色)・首相はオレンジ色・一般市民は白色というように身分によって色が異なります。
女性の「キラ」はインドの民族衣装・サリーの影響を受けたもので、ティマという3枚布を縫い合わせた布地を複雑に体に巻いてワンピースのように着ます。
さらにその上に長袖のブラウスを身に着けたり上着を羽織り、男性のカムニに当たるものとして「ラチュ」ーと呼ばれる肩掛けを身につけます。
ブータンの人々はファッションに対してこだわりをもっており、ゴの丈の長さや重ね合わせの幅などが少しでもズレていたりすると、厳しく注意されるのだとか…。
~食事~
ブータンの主食は米で、特に赤米が好まれています。特徴的なのは、食べるご飯の量がとても多いこと!
ブータン料理は「世界一辛い料理」と言われています。
その理由は唐辛子。
ブータンでは唐辛子を香辛料としてではなく、野菜として(!)使うそうです。
うわ!真っ赤な唐辛子!
こちらは「エマ・ダツィ」という唐辛子をチーズで煮込んだ料理です。
この他にも様々な唐辛子料理があって、ブータンの人は毎食のように唐辛子料理を口にしています。
一般的な家庭では唐辛子料理のおかず1品と大量のご飯という食事スタイルが多いようです。
ブータンに旅に行ったら辛い食事ばかりなの…?と不安に思われる方もいるかもしれませんが、観光客向けの食事は辛さ控えめのようなのでご安心を!
もう一つ、食に関してご紹介したいことがあります。
それはブータンで栽培される野菜について。
ブータンの市場にはタマネギ、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、トマト、キャベツ、ナス、ゴーヤ、インゲン、カリフラワー、ブロッコリーなど日本でお馴染みの野菜が並んでいます。
昔のブータンでは野菜はほとんど食べられなかったそうですが、西岡京治さんという一人の日本人が野菜の種をブータンに持ち込んだことからこれらの野菜が栽培されるようになったのです。
彼の農業改革のおかげでブータンの食生活はとても豊かになったのだとか。
当時のブータン国王は彼の功績を称え、民間人の最高位「ダショー」の称号を贈りました。
一人の日本人がブータンの国の食に大きな影響を与えただなんて、少し誇らしい気持ちになりますね。
意外なつながりがあるものです。
~住居~
ブータンの伝統住居は木造・白壁・三階建てで木造の部分が極彩色の紋模様で塗られているものが多いようです。
1階は家畜用で2階が穀物倉庫、3階が台所や寝室、仏間などの居住スペースになっており、屋上は農作業用のスペースとして使われます。
ブータンの住宅では版築という木枠のなかに土を入れてその土を突き固める工法を用いて丈夫な壁を作っています。
この独特の建築はブータン様式と呼ばれ、冬は家畜の発する熱で上の階があたたまり、木と土を用いた壁は断熱性に優れているなど、快適な住環境になっているそうです。
現在では、WHO(世界保健機関)の家畜と人間を分離させるという指導により、家畜小屋は民家から離れたところに建てられるようになっています。
いかがでしたか?
ブータンは伝統的な文化を大切にしているというイメージが強いですが、近年では近代化が進みつつあり、人々の生活や価値観が変化しているそうです。
特徴あるブータンの文化がこれからも大切に守られていくといいと思います。
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